百地外伝~夢と希望

「ユタ、あんた、翔のこと解ってないよ。

翔があんな不条理な命令、死んだって従うわけないんだ……」

「そんな、大げさだな……

僕にしてみたら、百地君が怒るならまだしも、藤林さんが怒る理由が解りませんよ」

「六年の時さ、クラスの女の子がいじめに会ったんだ。

その子、家の事情でお風呂とか毎日入ってないらしくて、髪もボサボサでさ、ちょっと臭くて、で、男の子達にからかわれてたの。

結構乱暴な奴らだったから、女の子達も見て見ぬ振りしてた。

でも、翔はその現場を見つける度、その子を守って戦ってた。

ある時さ、先生がたまたまその場に遭遇した。

だけど、何てことない、先生も見て見ぬ振りして通り過ぎようとしたんだ。

翔は怒って、先生に詰め寄った。

そしたら、その先生、『からかわれる方が悪い』って……」


「ことなかれ主義ってやつですね」

ユタはあくまで冷静だ。


「その時の翔はさ、そのままその先生の腕引っ張って校長室へ連れてって、

『こいつは、〈いじめはいじめられる方が悪い〉って言ってるけど、それがこの学校の方針か!』

って、今度は校長に詰め寄ったの」

「はぁ、お前、どんだけ猪突猛進だ?」


百地が呆れ顔で翔を見る。
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