百地外伝~夢と希望
「で、校長、なんてったんだ?」
「〈学校では、先生が絶対だ〉って」
「やっぱりね、大人って、そういうとこ、ずるいから」
「それから卒業まで、翔は授業中、ずっと居眠りを決め込んで先生を無視した」
「はぁ、すげえな」
「でも、あの時は六年だったからいいよ。
卒業まで間がなかったし。
でも、今、あたし達、中学入ったばっかだよ。まだ三年もあるんだよ。
入ったばっかで、こんな諍い、もたないよ……」
「田中の心配もわかった。
でも、兎に角、筋は通しに行こうや。
心配すんな、俺も一緒に行く。同じ陸上部員だしな」
「百地、余計なことすんなよ。
これは俺の問題だし」
翔の目はずっと遠くを見据えたままだ。
「お前が怒ってんの、俺のためでもあんだろ?
俺が無視されてるの、怒ってんだろ?」
百地が翔を覗き込んだ。
「違う。
俺を特別扱いしようとする『あいつ』に腹が立つんだ。
それが、あいつの正義か?
冗談じゃない!
願い下げだ!」
「まぁ、兎に角、落ち着けよ、翔。
俺がなんとか話を旨く運んでやる。
お前らも、部屋のドア開けとくから聞いてろよ、校長の話」
「うん」
「行くぞ、翔。
毅然として振舞えよ。
喧嘩しに行くんじゃないんだからな」
「分かったよ」
翔は渋々頷いた。