百地外伝~夢と希望
『トントン』と、百地が校長室のドアをノックすると、
中から『どうぞ』と、声がした。
「失礼します」
二人はドアを開け、大きな声で挨拶すると、校長室へと入っていった。
その時、百地の首に巻いてたタオルが床に落とされて。
タオルは丁度入口に溜り、ドアが完全に閉まるのを阻止した。
「君が半田先生の言っていた、藤林翔さんだね。
全国ジュニア陸上大会女子の部、優勝だそうじゃないか」
「はい。そのことで、校長先生にお話があります」
「何だね?」
「半田先生は、今日の記録会での記録が良かったら、ぼ……わ、わたしを夏の大会出場メンバーに加えても良いとおっしゃってくださいました」
「ほう、それは名誉なことじゃないか」
「でも、わたしは、特別扱いを望んでいません。
記録を計るなら、一年全員の記録を計って、その上で出場枠を競うのが筋だと思います」
「それを言うために、君はここに居る訳か?」
「はい」
ドアの隙間から、翔の少し震えた声がはっきりと聞こえた。