初彼 -ハツカレ-
「で、彩貴。
……言いなさいッ!!」
木場先輩達との買い物も終わって、
1番近い飛希の家に直行した。
木場先輩は、
初めて来たらしくて、
何だか少しだけ嬉しそうな顔をして
帰っていった。
そんな木場先輩を見て、
新田先輩は
「いやらしい事でも
考えてるんじゃないの??」
っと言ってからかった。
で、最初に戻る。
「彩貴!!」
「ってか久実がこんな風に
聞くのって珍しいよね…;;」
あたしによって壁に追いやられて
汗をかいている彩貴が、
飛希に訊いた。
「確かに珍しいよね;;」
「………いいじゃん!!
聞きたいの!!気になるのッッ!!」
確かに聞きたいし気になる...
でも本当は、
紛らせたいだけ…。
本当は…
ただ忘れたいだけなの……。
少しでもいいから忘れたいの…。
1人になると、
部屋にいると哀しくなって
泣いちゃうから、
暗く想像しちゃうから、
みんなと一緒にいて、
他愛の無い事で大はしゃぎして、
最後には笑顔でお別れできたら、
その時間だけは幸せになれる。
忘れられる…。
あんな事…
覚えていたくないよ――…。