初彼 -ハツカレ-
あと3日後には卒業式の準備で体育館は
使えなくなる。
自分達も卒業式の準備をするから
部活の時間が少なくなる。
「ぁ、部長…」
「だから部長じゃないって;;
市丸がかわいそうだろ?」
でもあたしの中の“部長”は
部長しかいないんだもん。
「今日は大学の方じゃないんだね」
部長は時々大学の方に行って
練習をしている。
大学の練習はキツいって部長が言ってた。
「始まる2週間ぐらい前から来たらいいって
今は最後の思い出作っとけって」
「そっか」
何だか部長が卒業って………。
って感じに少し違和感があった。
今日の卒業式の練習まで―…。
クラス分の卒業証書を貰う部長。
在校生席と保護者席の間を
部長達がゆっくりと歩く。
そんな場面を見て、
あたしも在校生からの歌を歌っていて。
そんな事をしていたら
―――現実味がした。
部長が後5日で
どこか遠くに行ってしまうって
思ったら、
急に部長が恋しく思えた。
急に部長が愛しく思えた。
急に寂しくなった。
急に我儘になった。
急に引っ付きたくなった。
急に部長にぎゅっとしたくなった。
こんなにもいろんな『急』が現れて、
あたしがこんなにテンションが低いのも
頭がグルグルしているせいにしとこう。
本当は、
寂しいだけ。