初彼 -ハツカレ-




本当は今日だって部長と一緒に帰りたい。

もぅ学校で会えない分、

いっぱいいっぱい話したい。



卒業する先輩に渡す手紙も、

部長だけ書けないまま。

何を書いても後悔しそうで、

書けないんだ。

何かが足りないんだ…。





部長に許可を得て木積くんに訊いてみた。

木積くんにはいっぱい助けてもらった

部長も木積くんの事

気に入ってるみたいだし。

付き合ってる事を言って相談してみた。



『深く考えすぎだろ。

単純に小泉が思ってる事書いたら?』



それでも無理だった。

木積くんには本当にお世話になってて

毎回毎回気づかされる事があるんだ。

でも、

今回は無かった。

木積くんが悪いんじゃない。

たぶんあたしも悪くない。

今のあたしじゃぁ、

この思いは分からないんだと思った。




「小泉、寒いからはい。」

渡されたのはカイロだった。

温かいカイロ。


「選手が冷やして風邪引くなよ」

「………わかってるょ。」


今のあたしは、

このカイロも宝物になりそうだ。



「……小泉、」
「……部長?」

あたしと部長の声が重なった。


「「…どうぞ」」

また重なって2人で笑った。

こんな雰囲気も、宝物。


「……ぁのね…?

卒業式のまでのいつでもいいけど……

一緒に……帰りたいです……///」


「先に言われた。」

「?」

「それ、俺が言おう思ってたのに」


って言って部長は少し不貞腐れた顔を

見せてキュンッとした。



「じゃっじゃぁ……お願いします///」


そんな感じで、

約束をしました。






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