初彼 -ハツカレ-




そんな能天気な感じで毎日が過ぎた。

手紙も書けないまま、

卒業式の前日になった。





卒業式の準備で体育館が使えないから

今日の部活は外でランニング。

ひたすら走るだけ。

中でもキツイのが、

後ろを向きながらグラウンドを

10周走る。

ってのが1番キツイ。

3周目ぐらいで

足がパンパンになってしまう。

10周前を走ったら、

後ろ向きで10周走る。

前は余裕でできるんだけど、

後ろ向きでの10周は本当にキツイ。



タイムの測定は、

卒業式の前日なのに

新田先輩が計ってくださった。


木場先輩も、

今日はバイトを入れているみたい。

部長は進路の先生と

話があるって言ってた。





「うっわ寒;;」

グラウンドの入り口に首にマフラーを

巻きつけてる部長がいた。

何だかそんな姿が可愛く思える。




何だかそんなのが最近多いんだ。

廊下で部長を見つけると、


もぅこんな部長も見れない。

練習をしている部長も見れない。

新田先輩と木場先輩と
無邪気に笑ってる部長ももぅ見れない。

髪の毛をグシャグシャにする部長も見れない。



いろんな部長と、

離れ離れになるんだ。


いろんな部長の“最後”が見える。


卒業の寸前になると、

こんなにも部長の小さな仕草も

好きに思える。


不思議だよね...




“最後”が見えると、

別れが寂しく思える。

“最後”が愛しくなる。




寒さで鼻を真っ赤にしている部長も、

好きだって、

ぎゅっとしたくなる。


やっぱり別れは寂しい…。






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