初彼 -ハツカレ-




部長がこんなに近くにいる。

部長がこんなに嬉しそうな顔を

しているのが久しぶりに思えた。


最近は部長もあたしも忙しかったから

なかなか話をしていなかった。

それに会えない日ってのが多かった。

だから久しぶりに会った今日は、

何だか恥かしい。


本当は今だってドキドキしてるし、

心臓だって飛び出しそう。


でも部長がこんなにも近くにいるのが

凄く嬉しい。












「あ、校内でも息白い」

部長がはーっと息を吐いた。

「本当だ…」

廊下の中でも吐いた息は白くて、

本当に寒い。


「大学では友達できた?」

「できたよ?
市外の高校出身で勇希に負けたって」

勇希ってのは永川先輩。

「へー県大会でてたんだ」

「それぐらいじゃないと
推薦もらえないよ」

「そっかぁー」


「あそこには理学療法の先生もいるから
怪我したら診てもらえるし試合前には
テーピングもしてもらえる。
それに設備もいいしな」

「そっか」



何だか寂しい思いもある。



「…………大丈夫?」

「…何が?」

「何だか…寂しそうだなぁって思って」

部長は
「そんなのありえない」
って感じに言うけど

あたしは本心を見破られたみたいで

ドキッとした。


「……小泉?」

「えっ!?」

「ぇ、マジなの??」

「ぇ…」


今ぐらい、

我儘になったっていいよね。



あたしはコクンと頷いた。






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