初彼 -ハツカレ-




「小泉…?」

「ごめん…」

必死で涙を拭っても、

涙が止まらない。


久しぶりに感じたこの不安感は、

心を痛めつけた。

恐い。





「卒業するの、…嫌…??」

あたしは素直にコクンッと頷くと、

「別に二度と会えない訳じゃないのに泣くなよ」

「でも…ぃや…」



ほら、今だって優しくあたしの頭を

撫でてくれる。


そんな事も、

稀になってしまう。

恐いのもある。

寂しいの…。

1人になるのが寂しい。



どんどん近づく部長が好き。

大きくて温かい

部長の掌が、

あたしの顔を包むように触れる。

瞼の上にちゅっと軽く触れる

キスをした後に唇にも触れるキス。

そこから久しぶりにした、

少しだけ深いキス。


部長に抱きしめられるのが好き。

部長の腕の中にすっぽり入るのが好き。


「…ちゅ…」

「ッッ///」

そんな音がして、

恥かしくてビクッと反応をすると、

部長は少しだけ唇を離して笑顔を見せる。

そんな笑顔が好きだっていうのは、

あたしの中でしか知らない。




「?」

キスの間に何かが入ってきたと思ったら、

その感覚にゾクッとした。


「っ…ぁ…フンッ」

聞いたことも無いあたしの声がして、

聞きたくないのに

そんな声が次第に大きくなっていって

部長から逃げようとしたのに

逃げられなくて、

哀しくも無いのに、

少ししか嫌じゃないのに、

なぜか涙が出た。






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