【短】雨宿り
『いただきます』

私は遠慮がちに小さな口を開いた。

それをじっと見つめてた彼。

人に見られながら食べるのって、こんなに緊張するもんなんだって、初めて思った。

変に震えてしまう口元。

でも動き出した顔を今更引っ込めるわけにもいかず、平静を装ってなんとか彼のスプーンから、コーヒーゼリーを奪い取った。

そして口に含んだそれを、味わう前に

『な?美味いだろ?やばいだろ?』

嬉しそうに彼は笑いかけてくれたんだ。

別の意味で『やばいです』って、本気で思った。

彼の背中に後光がさしたようにすら見えたんだ。

窓から差し込む光が、彼の後ろを照らしていたせいなんだけど。

ちょっと痛みかけの茶色い彼の髪も、その光をうけて金色に輝いていて。

焦げ茶色の瞳も、日焼けした浅黒い肌も笑顔そのものも。

彼を取り囲む全てのものが、キラキラ輝いて見えた。

その時の私は、コーヒーゼリーの味もわからないまま彼に釘付け状態だった。

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