【短】雨宿り
「私はそのつもりでも、相手に思いやる気持ちががなければやっぱり無理だと思います。

さらに話し合う時間さえない、忙しい人ですから」

「……」

何も言い返せないと言うように俯いた彼は、突然、こんな提案を出した。

「僕と、デートしませんか?」

「は?」

「僕、午後から仕事だったんですけど、休みとったんですよ。だから、時間があるんです。

僕は彼女と、あなたは彼と、また始められるように恋人ごっこで、デートのシュミレーションしてみましょう!!」

「ち、ちょっとっ!」

言いかけた私に、やっぱりお構いなしな彼は、立ち上がったかと思うと私の手をつかみレジへ向かう。

そしてサッサと会計を済ませ、賑やかな街の中に私を連れ出した。

「恋人ごっこだなんて、そんなの仲直りと何の関係もないと思うんですけど」

私はつかまれた手をふりほどき、苛立ちを露わにした。

「一緒にデートして、お互いの悪いとこ教えあえば、本番うまくいくと思いません?」

「はぁ?」

本番って……。
< 40 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop