【短】雨宿り
残された私は、そんな彼に布団をかけ、1人で食器を片付け。

しわしわになったスーツにアイロンをかけ、脱ぎっぱなしの革靴を揃え。

彼の鞄を片付け、ボスンッと大きなクッションの上に座り込み。

虚しさだけが私の心を突き抜けた。

一生懸命働いてくれてるのはわかる。

養わなきゃっていう責任感で、がんばってくれてるのもわかる。

口べたなのもわかってる。

でも。




──私のこと、好き?




言ってくれなきゃ、わかんない。




『仕事と私、どっちが大事なの?』

まさか私がそんな事、口にするなんて思いもしなかった。

そんな事聞いたって仕方ないのに。

何を言い出すんだよ?と言いたげに、うざったそうな顔を向けた彼は

『両方』

と、あっさり答える。

でもそんな答えが欲しかったわけじゃない。

ただ

『好きだよ』

あなたの気持ちが欲しかったの。

ただそばにいて、ただ笑って、ただ話がしかった。


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