【短】雨宿り
「なんでフッたの?」

「……だって」

最近残業って嘘ついて朝帰りばっかりだし。

せっかく昨夜早く帰って来たと思ったら気づくとソファーで寝てたし。毎日ほったらかし。

最初からずっとそうなんだ。

待ってるのも見てるのも想ってるのも私ばっかり。『好き』とか言われたことないし、なんか冷めてるし。

一生懸命作る慣れない私の料理も、喜びすら見せない彼は当然のように簡単に食べ終えてしまって。

まぁ、べちゃべちゃのご飯に味のないハンバーグ、茶色い玉子焼きにしょっぱすぎる味噌汁……数々の失敗作を残さず食べるだけすごいのかもしれないけど。

でも、毎日バイトから帰って作る料理にどれだけ奮闘してるかなんて、彼にはわからないんだ。

徹夜で作ったお揃いのビーズストラップも、結局使ってるのは私だけだし。

私の恋心は全くと言っていいほど、彼には届かない。

この恋は初めから最後まで私だけの一方通行だったんだ。

クローゼットを片付ければ出てくるのはエッチなDVDと、前の彼女の写真で。

それを見つけた時に、最後の糸がプツンと切れてしまった。

私よりAV女優の方がいいんだ。

元カノの方が良かったんだ。

ううん。毎晩共にする浮気相手の方がいいんだ。

……考えてたら、まるでフラれたのが私の方な気がしてきた。

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