空が泣いた日



「じゃあ私たちはここらへんでおいとまするので、しっかり休んでくださいね。」



「じゃあな。」



「はい。──おやすみなさい。」




部屋から出ていく二人の背中を
千晶紀はじっと見続けた。



その姿をしっかりと
心に焼き付けるように──…




千晶紀はこみ上げてくる涙を
唇を噛み制した。



千晶紀は泣かなかった。



泣いてしまったらここでの思い出を
味気ないものに
してしまいそうな気がして──…



本当に一瞬だったけど
彼らの優しさは一生の宝物──




千晶紀は少し時間をとり、
立ち上がった。



部屋の布団を綺麗に畳んで
押入にしまい、部屋を出た。




"ありがとう"と
小さく呟きながら──…



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