空が泣いた日



もちろん聞きたいことは
たくさんある。


しかし、今一番気になることを
ピックアップしてみたら
このようになったのである。



「あぁ、すいません。
まだ名乗っていませんでしたね。
私は新撰組一番隊隊長沖田総司。
そしてここは屯所です。
大丈夫。怖くないですから。」



ぽんぽんと軽く頭をなでる沖田。


沖田には人を
落ち着かせる何かがある──…



千晶紀はそう思った。


心が少し軽くなったのを感じたのだ。



それにしても新撰組──…



もちろん千晶紀だって
名前くらいは聞いたことがある。


普通に生活していれば
誰だって聞いたことがあるはずだ。


そう、"普通"に生活していれば
誰だって──…



私とお父さんだって"普通"の
生活をしていたんだ。


なのにどうして──…?



今でも鮮明によみがえるあの現場。


父の亡骸を思い出しても涙は出ない。


ただ悲しみと怒りが激しくうずまき、
とぐろを巻くだけだ。



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