哀しきこと…
+第1章+…祭り…
「わぁ〜〜。今年も賑やかに始まったねぇ〜〜」
碕山 紘伽(サキヤマ ヒロカ)は、外で聞こえるお囃子の音に歓声を上げた。
紘伽は、二十歳を少し過ぎたばかりの社会人一年生。
今日は近所で夏祭りが開かれる。人気のない神社が一年で最も賑わう日なのである。
自宅の縁側でくつろいでお囃子の音を聞いていると、神輿を担ぐ男達の威勢の良い掛け声が聞こえて来た。
「西瓜が冷えたわよ」
その掛け声に混じって聞こえた声は、大きなお腹を抱えて西瓜を運ぶ、向井 爽佳(ムカイ サヤカ)のものだ。