哀しきこと…
「光ちゃん……」



紘伽は、光一を起こさないようにつぶやきながら指を開き、髪をそっと撫でた。



光一の頬には、さっきまで泣いていたのだろうか、涙の跡が見える。


「こんなに小さいのに、お兄ちゃんだもんね。頑張ってるよね……」



髪を撫でる手の下で、光一が少し笑ったように見えた。



そして、それが本当に哀しく見えた。



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