哀しきこと…

しばらくすると窓を閉めていてもわかる程に言い争っている声が聞こえた。


「様子がおかしい……。これって、ヤバいんじゃない？早くバックしなきゃ」


しかしその場所は抜け道に使われることが多く、既に後続車がいて身動きが取れない状態になっていた。



「あちゃぁ～。こりゃ、降りてみるしかないかも……」



恐る恐るドアを開け外に出ると、止まっている車の向こうで初老の男と中年の男が言い争っていた。



「だから、謝っているじゃないですか…」


半ば怒鳴り声の中年男。

「お前がクラクションなんか鳴らしたからいけないんだ!!」


それに対抗する初老男。

滋は訳も分からず、２人を見比べていた。