哀しきこと…
「あれ?」
紘伽がキョトンとしながら隣りを見ると、滋が携帯を握り締め番地を言っているところだった。
「………はい、ではよろしくお願い致します」
いつもとは違ってテキパキと話す滋に尊敬のまなざしを送る紘伽。
「どうしたの?用件は終わったよ。警察屋さん来るってさ」
紘伽にそう告げたあと、大悟にOKサインを送る。
男は一向に動く気配を見せず、自転車を動かさまいとした姿勢を崩さない。
他の運転手も、車を下げれば動けるのに結果をみようとしてなのか、その場を離れる者はいなかった。