俺様王子と秘密の時間
ダンッ――。
羽鳥が女性を下駄箱に押し付け、頭を抱きしめるようにして唇を塞いだ。
「もぉ……」
「ユリ……お前可愛い」
見たこともない表情を浮かべる羽鳥と、甘い声を漏らす女性……。
もう耳を塞いでしまいたかった。
はーちゃんは口に手を当てて目をまん丸にして唖然としていた。
羽鳥の好きな人って……今目の前に居るユリさんって人?
こんなとこで何してるのよぉ。
羽鳥のばかぁああああ。
「雅弥……誰か来たら……」
「もう誰も居ねぇだろ……こんな雨だし、大丈夫だって」
搾りだすような羽鳥の甘い声を初めて聞いたあたしは、複雑な気持ちになってしまった。
なんでかわからないけど。
恋愛感情とかじゃなくて、いつもじゃれあってる羽鳥はそこに居ない。
まるで知らない人みたい。
―――もぉ、ぐちゃぐちゃだよ。