俺様王子と秘密の時間
キスなんて出来ないよ。
顔を傾けて、そんな挑発的な表情しないでよ。
一時でも千秋にドキドキしたり、ときめいてしまった自分が情けない。
……何故か無性に悲しくなる。
「……やだよぉ…」
気がついたらポロポロと涙が頬を伝っていた。
鼻の奥がツーンと熱くて、緩んだ涙腺が一気に崩壊したみたいに涙が止まらない。
「……ちあ…きの……バカ……」
そんなあたしに気づいたのか、背中に回る千秋の手の力が緩んだ。
「き……嫌い…アンタなんて……もぉ大っ嫌いっ」
嗚咽を漏らして泣くなんて。
あの日、中庭で初めて見た……本当の王子様みたいに優しく微笑んだ千秋に恋の予感がした。
でも、やっぱり……
「きゃっ……」
視界が歪んだかと思ったら、千秋が一気にあたしを抱き起こして力いっぱい抱きしめた。