俺様王子と秘密の時間
「……てめぇ」
ジリジリと千秋を睨み付けるこんな怖い羽鳥の顔を、あたしは初めて見た。
やっぱり悪いことは出来ないものだ。
いつかこんな風に誰かに知られてしまうような気がしていた。
「椎菜。またエッチなことしような?」
挑戦的な涼しい笑顔で言うと、千秋は羽鳥の横を通り抜けて部屋を出た。
「………シイ」
羽鳥の声に心臓がふっ飛んでしまいそうなくらい、あたしは動揺している。
「羽鳥……あのね……」
「聞きたくねぇよ……」
目を合わすことすらしてくれなかった。
“言い訳”することも許されなかった。
羽鳥は無言であたしのジャージを手に取ると、ルームウェアの上からあたしに着せた。
その沈黙が何かを物語っているようで苦しかった。
羽鳥は結局、何も言わず、何も聞かずに部屋を出て行った。