俺様王子と秘密の時間
昼食は全く喉を通らなかった。
レストランに羽鳥の姿はなくて、はーちゃんとコウちゃんだけだった。
「シイ?食べないなら貰うよ?」
コウちゃんが横から天ぷらを奪った。
せっかくの山菜料理を無駄にしてまった。
それから結局、あたしの頭は羽鳥にバレてしまったことでいっぱいで。
それは誰かに知られるのを恐れてじゃなくて、羽鳥のあの瞳が焼き付いていたから。
山の中の樹木や花のレポートなんてほとんど白紙に近かった。
時たま、はーちゃんの視線を追うとその先には千秋が居た。
それを見ていられなくて、何度もレポートに集中しようとした。
……でも出来なかった。
あっという間に太陽が沈み夜を迎え、あたしとはーちゃんは大浴場に向かった。