俺様王子と秘密の時間
「いやぁああああああ……!」
そこで目が覚めた。
変な汗をかいたせいで身体中がベッタリとして気持ち悪かった。
バンッ――!
「ちょ……ちょっと!どうしたのよっ……」
悲鳴を聞きつけたお姉ちゃんが、勢いよくドアを開けて顔を出した。
「椎菜、大丈夫?」
……嫌な夢を見た。
あの頃の絶望。
過去は消えないものだ。
忘れたくてもこんな風にいつだって顔を出すんだ。
夏合宿のあの夜は、まるで幸せな夢を見ているみたいな気分だったのに。
シャワーを浴びて汗を洗い流す。
「あ……」
ふと鏡を見るとまだ微かに残る赤い刻印が目に入り、とたんに顔が熱を持つ。