俺様王子と秘密の時間
うううううぅ……。
成瀬川の胸がメチャクチャ近くなって、少し緩めたネクタイが当たりそうなくらいだ。
てゆーか……
さっきから勝手に“椎菜”なんて呼んでいるけどそれに触れるのもヤめた。
またからかわれそうなんだもん。
「アイツのこと、好きなわけ?」
「アイツって……?」
「女ったらし野郎」
あ――、南センパイか。
確かに好きだったのかもしれないけど、さっきのことでその感情が消えてしまったんだ。
ポッと灯った明かりが消えてしまったみたいに。
ほんとの恋じゃなかったってことなのかな……?
ほんとの恋って、なんだろ?
「あ……アナタに関係ないです。またあたしをからかってるんデスカ……?」
成瀬川をキッと睨んだ。
あたしはムカムカしていたし、成瀬川の何でも見透かしてる瞳が嫌なのだ。
プイッと顔を背けて教室に戻ろうとした瞬間……
ダンッ――!