俺様王子と秘密の時間
「な……なななに!?はーちゃんどうしたのっ!」
「あ、あれ……」
へっ?
あたしは椅子から立ち上がると、はーちゃんが窓の外に向かって指をさす方へ目をやった。
夕陽が照らす駅前通り。
ごった返す人混みの中に一際目立つ、紫色のキャミソールワンピを着た派手な女の人。
その隣にはやっぱり……
「羽鳥……」
ウェーブの髪が揺れる。
ダルそうな顔つきで歩く羽鳥の隣には、“ユリ”と呼ばれた女性。
大袈裟すぎるくらいの巻き髪が、羽鳥の周りでふわふわ揺れていた。
「ねえ、あの人。前に下駄箱で、羽鳥と……」
あたしの頭の中を過った光景を、はーちゃんは口に出したけれどすぐに止めた。
目で追い続けたけれど、羽鳥とその女の人はやがて人の波に呑まれて消えた……。