俺様王子と秘密の時間


「やっぱ僕は才能があるんだよ」


ほら、とあたしの方へ差し出された写真に恐る恐る視線を辿らせた。


日射しのない階段下で壁に押し付けられているのは紛れもなくあたし。

そしてあたしの頭のわきに両手を置いて覆い被さるのは王子である千秋。


あたしと千秋がキスをしているところを横から撮ったような写真だった。



「どうして……?」


その写真にギョッとしたあたしは、まるで心臓を握りしめられたような感覚に陥る。


呟いた声が震えた。

誰も居なかったハズなのに。



「知ってた?あの階段下の曲がり角の前にある印刷室で、僕は校内新聞の作業中だったんだよ?」


瞬きすることもなく固まるあたしの表情を覗きこむと、涼くんは無邪気に笑った。


その無邪気さが怖い……。
 

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