俺様王子と秘密の時間


夏合宿の出発前の出来事だ。


あの日の朝、千秋に呼び出されたあたしは階段下に向かった。


キスをしたのは確か……。

けれど当事者であるあたしはキスに夢中になっていたんだから、涼くんが印刷室に居たなんて気づくハズもない。



「神様が僕の味方をしてくれたんだ。あの時、カメラを持っていたのは本当に偶然だったんだから」


涼くんはあたしから離れるように身体を戻しパイプ椅子に腰をおろす。



バスの中で羽鳥が言っていた言葉が頭をかすめる。


『どうやら、次のターゲットはお前ってことかな?』

狙われたら終わりだとも聞いた。



「センパイのこと、色々調べさせてもらったよ」

「……」

「僕ね。こう見えて顔が広いし要領良いから他校のセンパイに気に入られてるんだ」

「……何が言いたいの?」


この子は怖い人だ。

童顔な顔とは真逆の性格で、何を考えているかなんてわからない。

 

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