俺様王子と秘密の時間


涼くんは再び立ち上がるとガラス張りの戸棚から何かを取り出した。

今度は大きくてしっかりとした厚さの薄い本のようなものだ。



「これを見た時、僕はビックリしたよ……ぷっ、笑いが止まんなかった」


含み笑いをしながらあたしにその本のようなものを差し出して、椅子に腰かける。


ソレを見た瞬間、目に見えるものが色を失ったようだった。



なんで……?



ソレは本なんかじゃない。

“卒業アルバム”だ。

それもあたしの中学校の。



「人って、こんなに変われるんですねぇ?」

「……なんで?」

「だーかーらー、言ったでしょ?僕は顔が広いからって」


やっと癒えてきたのに。

やっと立ち直ってきたっていうのに、どうして蒸し返すような真似をするの……?

誰がこんなものを涼くんに渡したの……?


 

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