俺様王子と秘密の時間
最低な人間だと思った。
いくら可愛い顔をしていたって、中身は醜く歪んだ悪魔だ。
「“氷のプリンス”なんて呼ばれてる王子様が口づけをするくらい惚れ込んでるんだから、センパイになら簡単なことでしょ?」
「出来るわけないじゃないっ!」
黙りこくっていたあたしだったけどついに叫び声をあげて否定した。
話が途切れた重苦しい沈黙の中、
ヴーヴーヴー。
ポケットの中で震えるケータイのバイブの音が部室内に響いた。
ディスプレイに目をやる。
着信:千秋
その名前を見ただけで涙が出そうになる。
「ソレ、バカ王子からでしょっ?今日は見逃してあげるから、決心がついたらまた来てよね?セーンパイ」
お見通しだと言わんばかりのふざけた笑顔であたしを見据えると「あっ!」と何かを言いかけた。