俺様王子と秘密の時間
◆苺味の内緒事
グスッ……。
保健室の前までやってきたあたしは手の甲で涙の跡を拭った。
長い夏休みを挟んでいたから千秋に会うのは夏合宿以来だ。
はぁあああああ……。
聞きたいことがあるけれど、いったいどんな顔をして会えばいいんだろう。
もぉ、やだよぉ……。
あの悪魔みたいな涼くんの企みと、あたしの過去は絶対に千秋には知られたくない。
だからといって涼くんの企みを潰す術なんて、いくら頭をフル回転させてもわからない。
今だけは涼くんのことを頭の片隅に追いやろう。
……よしっ!
悟られないよう平常心を保とう。
あたしはそっと扉に手をかけて、静かにドアを横に引いた。