俺様王子と秘密の時間


微かに漂う保健室独特の雰囲気と、薬品の匂いが鼻をかすめる。


窓際にベッドが二つ並んであり、入口の横には先生用のデスクがある。

大きく切り取られた窓の側には、鉢植えのミニヒマワリが飾られていた。



「あ……あれ?」


あたしはおずおずと中に入ったけれど面食らった。

千秋の姿がないからだ。


な……なんで?

自分から呼んだクセに。

もしかして帰ったわけ?



あたしはズンズンと中に歩いて、窓際にあるミニヒマワリに近づいた。


……懐かしいなぁ。

中3の時、育ててたんだよねぇ。


そんな思い出に浸ってる場合じゃなくて、なんで千秋は居ないの?


むっかぁあああああ。



「バカ王子っ!!」


なんだかムカムカしてきたあたしは独り言のように声をあげた。



……その時だった。







「誰が、バカだって?」



へ……?

 

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