俺様王子と秘密の時間


あたしの名前を出されたとたん、ネクタイを引っかける手の動きが止まる。



「近づいてんのって。椎菜はオレのモノだから?」


曖昧な言い方は挑発にもとれる。

けれど千秋の声は笑ってなんかいなくていつもよりずっと低い声だった。



「てめぇ、“アイツ”が今どういう気持ちかわかってんの?」


―――“アイツ”?



「わかってるよ」

「わかってねぇよっ!!」


羽鳥が怒鳴り散らした。

緊迫した雰囲気だということは、カーテンに隠れているあたしにも伝わる。



「オレは“アイツ”に何もしてやれねぇよ」

「……だったら突き放してやれ。初めから優しくするんじゃねぇ」


あたしにはさっぱり理解出来ない会話だった。

ただ、千秋と羽鳥には何かがあるんじゃないとか思わずにはいられなかった。

 

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