俺様王子と秘密の時間
「中途半端が一番卑怯なんだよ」
羽鳥の怒りに満ちた低い声にあたしは硬直してしまって、息をするのさえ忘れてしまう。
「じゃあ、お前はどうなんだよ?あの時、アイツに何もしてやれなかったヤツがでけぇ口叩いてんじゃねぇ」
こんなにも怒りのこもった千秋の声を初めて聞いた。
この二人は何かが変だった。
お互いに対する気持ちがぶつかり合っているみたいで、二人に違和感を感じたんだ。
羽鳥は千秋のことになると顔をしかめて突っかかってきた。
夏合宿の時もそうだった。
“アイツ”と呼ばれる人が何か関係していることはよくわかった。
「てめぇの生ぬるい優しさと一緒にすんな!」
「うるせぇ。今お前も同じことしてるじゃねぇか」
「アイツの気持ちわかってて、よく他の女に欲情出来るよな?」
言い合いはそこで途切れた。
呆れたような口調でそう言うと、羽鳥は鼻で笑い、それで止まるわけもなくさらに続けた。