俺様王子と秘密の時間
ヤバい……と思ったけれど時既に遅し。
「何やってんだよ……、バカ」
シャーッとカーテンが開いて、あたしにそう言ったのは眉を寄せた千秋だった。
「……っ」
千秋はあたしのネクタイを結ぶと、手首を掴んでカーテンの中から引きずりだした。
「シイ……」
すぐに羽鳥の顔が見えた。
ちょこんと結んだ前髪が、暗い室内でも羽鳥の鋭い目元を余計に引き立てる。
「あの……」
何を言えばいいかわからなくて、重苦しい雰囲気に呑まれてしまう。
……きっともう嫌われてしまう。
羽鳥は髪の毛を掻きあげると、うんざりしたような顔であたしと千秋に歩み寄った。
「きゃっ……」
直後、あたしの手を掴んで千秋の中から引っ張りだした。
「シイに近づくな」
「ちょ……ちょっと羽鳥……」
千秋に吐き捨てるようにそう言うと、羽鳥はあたしの腕をぐいぐい引っ張りながらバイクの鍵を取って保健室を出た。