俺様王子と秘密の時間
「ちょ……痛いよっ」
あたしの言葉なんて無視して、腕を掴む羽鳥はぐんぐんと廊下を進んで階段を昇る。
羽鳥の広い背中が怒っていた。
あたしは引っ張られたままウェーブの髪の毛がふわふわ揺れるのを見ていた。
「鞄、とってこいよ」
教室に連れて来られたと思ったら、さっきと変わらない声音で羽鳥はそう言った。
あたしはコクンと頷き、パタパタと小走りで机に直行した。
先生が閉め忘れたのか、あたしの席がある窓が全開だった。
誰も居なくなった開放的な教室は、ほんのりと薄暗かった。
「あ!コレ……」
机の上にあるモノが目に入った。
ソレを見たとたんに何故か、保健室に取り残された千秋の捨てられた子犬みたいな顔が浮かんだ。
「シイ、お前ソレ好きだろ?」
ふと声がして顔を上げると羽鳥がすぐ隣まで来ていた。