俺様王子と秘密の時間
「千秋……、もう帰っちゃったかな……?」
ポケットに手を突っ込む羽鳥を、あたしは横目で見ながら聞いた。
「知らねぇ」
不機嫌な口調。
きっとこんな返事が帰ってくるんじゃないかと思っていた。
けれどさっきの二人の会話が気になっていたし、やっぱり千秋と羽鳥には何かあるんだと思う。
苺ミルクに口をつけながらそんなことを思っていたらまた気分が沈んだ。
「ぷっ……」
突然、羽鳥があたしを見て笑う。
「な……なに?」
「自分だけ飲んでんじゃねぇよ。オレにもよこせ」
「えっ?でも……」
あたし口つけちゃったしそれじゃあ間接キスになるんじゃ……?
「飲みかけでいいって」
「あ……」
あたしの手から苺ミルクを奪うと、切れ長の目を緩めて子供みたいに無邪気に笑った。
どうってことない顔つきでさっきまであたしが飲んでいた苺ミルクのストローに口をつけた。