俺様王子と秘密の時間


羽鳥が苺ミルクを飲む横顔をあたしはどぎまぎしながら見ていた。



「間接キスくらいで、んな顔すんな」

「痛……」


それに気づいた羽鳥があたしにデコピンした。


あたし……、どんな顔してた?

くすぐったいような変な気持ちになったことにあたしが一番驚いた。



カナカナカナ………、物悲しいヒグラシの鳴き声が沈黙の中で響いた。

閉め忘れた四角く切り取られた窓から生温い夏の風が吹き抜けて。

長くて白いカーテンをふんわり揺らした。

あたしと羽鳥はそのカーテンの中に隠れる形になった。




「シイ……」


ふいに呼ばれたあたしは羽鳥の方へ身体を向けた。

羽鳥の瞳が真っ直ぐにあたしを捉えて、あまりにも真剣な顔だったから身動きが取れない。



「は、羽鳥……?」


切なげで、伏し目がちな羽鳥の表情が近づいてきて、長い腕があたしの頭の後ろに回った。




――そして唇が重なった。

 

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