俺様王子と秘密の時間
今にも消え落ちそうな駐輪所の蛍光灯が羽鳥の表情を微かに照らした。
いつもとなんら変わりない羽鳥だというのに、あたしはそんな普通の顔をすることが出来ない。
「乗れよ」
「えっ……?」
羽鳥がヘルメットをあたしに差し出したけれど、なかなかすんなり受け取れない。
だって羽鳥、言ってたじゃない。
コウちゃんに、
『オレの後ろは特別な女専用なんだよ』って。
「早くしろよ」
「だ……ダメ。だってココは羽鳥の彼女専……」
言ってる途中で羽鳥があたしの頭にスポッとヘルメットを被せた。
「お前まじでバカ。ムカつく」
「ごめん……」
意味もわからないまま謝って俯くあたしの頭をヘルメットの上からペシッと叩いた。
「置いてくぞ?」
バイクに股がる羽鳥は突っ立っているあたしを目で急かした。
戸惑いながらもあたしはスカートを折り込んで後ろに乗った。