俺様王子と秘密の時間
「掴まってろよ?」
「うん……」
返事と一緒に頷いてみせるけど、正直かなり躊躇っている。
キスの前と後じゃ、まるで違うからだよ……。
「振り落とすぞ?」
ククッとイタズラっ子みたいに笑って目を細める羽鳥に、あたしは慌てしがみついた。
「……くっつきすぎなんだよ」
「だ、だって……」
まあ、いいけどなんて呟いた直後、羽鳥はハンドルを握ってバイクを発進させた。
吹き抜ける風と一緒に羽鳥の爽やかなシトラスの香りが流れこむ。
ウェーブの髪の毛がバサバサと揺れているのをただ見つめていた。
「羽鳥ー、どこ行くのーっ?」
「適当ー」
叫びながら聞いてみるとほんとに適当な答えが返ってきた。
羽鳥のお腹に腕を回してキュッとしがみつくあたしの瞳に、前方に見える人物が飛び込んできた。
「羽鳥!止めてっ!」