俺様王子と秘密の時間


「んだよっ!いきなり言うんじゃねぇよ危ねぇなぁ」


あたしの声にバイクを急停止してくれた羽鳥の文句なんて聞こえていなかった。

その人物を追い越してしまったから、あたしはヘルメットを脱ぐと引き返すように少しだけ走った。





「春希さんっ……!!」


黒い髪の毛に千秋そっくりな目鼻立ちを間違えるわけないもん。

一回しか会ったことないけれど、ライトに照らされたその顔をあたしの頭はちゃんと覚えていたんだ。



「え?……あっ!椎菜ちゃんじゃないかぁ」

「お久しぶりです」


ほら、やっぱり春希さんだ。

小さな紙袋を手からぶらさげて、ニッコリ笑ってくれたんだ。



「ソレ、なんですか?」


高級ブランドの小さな紙袋。

あたしの問いにちょっと照れくさそうな顔をした春希さんが言った。




「ん?コレは、婚約指輪だよ」

 

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