俺様王子と秘密の時間


「シイ、ごめんね?」

「な、なにが?」


申し訳なさそうに謝るコウちゃんに、何だかあたしが悪いことをしてしまった気分になる。



「オレ昨日、保健室での会話聞いちゃったんだ……」


ドクン……。

大きく波打つ鼓動。

悲しげに見つめてくるコウちゃんに耐えきれなくなってあたしは目を伏せた。



「コウ、悪趣味よ」


それを笑い飛ばしてくれるようにはーちゃんが言うと、コウちゃんはバツの悪そうな顔をした。



「コウちゃん、ごめんね?」


コウちゃんに千秋との関係がバレてしまうことを恐れていたわけじゃない。

コウちゃんに嫌われてしまうんじゃないかと思ったら怖かった。

あたしはいつも自分のことばかりだ。


“花子”の時のように独りぼっちになることが怖かったんだ。



……いつだって後ろ向きのまま。

 

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