俺様王子と秘密の時間
「王子に過去を知られたくないのは、わからないでもないけど」
はーちゃんはいつも冷静だ。
わーわー、わめくあたしよりも、ちょっぴり大人なんだと思う。
「あたしは恋愛経験豊富なわけじゃないから偉そうなこと言えないけどさぁ」
はーちゃんの声にあたしは顔をあげる。
いつになく真剣な顔つきであたしを見据えるから、思わずゴクリと息を呑んだ。
ふぅーっと小さく息を漏らすと、はーちゃんは口を開いた。
「堂々と好きだと言えないような恋なら、さっさと辞めちゃいなさいよ」
静かにそう言ったけれど、口調はどこか力強いものを感じさせた。
まるであたしの心の奥底にある、弱い気持ちを読み取ってしまったみたいだ。
はーちゃんの言っていることは、間違ってなんかない。
「強くなんなよ、花子」
こんな優しさに泣いてしまいそうになる。
その時、入り口で人影が揺れた。
「セーンパイっ!」
悪魔の声が聞こえた。