俺様王子と秘密の時間


「は……放してってばっ!!」


階段に差しかかった時、不安の波が押し寄せてきたあたしは耐えきれずに腕をねじって涼くんを突っぱねた。


バサッ――!

その弾みで涼くんの鞄がふっ飛んでしまい、階段下に落ちてしまった。

中身がバサバサと散らばった。



「酷いなぁー、センパイ」

「……ごめんなさい」


あたしは急いで階段下に降りると、散らばった教科書やファイルを拾い集めた。

けれどラミネートされている大きな写真のようなものが目に入って手を止めた。

綺麗な海が写っている写真の横に“水城十蔵”と書かれている。



「コレ、なに?」


そう言いながら涼くんの方に振り向いた。



「見るなっ……!!」


目を見開いて驚いた涼くんは、声を張り上げると階段を一気におりてきた。


そしてあたしからソレを奪い取ると教科書やファイルと一緒に鞄の中へ押し込めた。

 

< 378 / 511 >

この作品をシェア

pagetop