俺様王子と秘密の時間


「涼くん……?」


あたしの言葉を無視して、またギュッと腕を掴むと歩きだした。


涼くんは酷く取り乱していた。

こんな涼くんを初めて見た。

いつも冷ややかな笑顔で余裕かましてる涼くんが、こんなに取り乱すなんて。



「大声出してごめんね。だけど、さっきのは見なかったことにしてね?」


背を向けたままスタスタ歩く涼くんは、いつもの涼くんだった。



下駄箱に着いて、ずっと口を結んでいたあたしは涼くんに聞く。



「あたしをどこに連れてくの?」

「卒業アルバムを返すだけさ」


え……?

ま……待ってよ……。

それってあたしの中学の人が居るってことだよね?



「や……やだっ!お願い放して!会いたくなんかない!」


死んでも会いたくない!

やっと、誰もあたしを知らない場所まで来て平凡に過ごしていたの。

絶対に嫌……。

 

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