俺様王子と秘密の時間


「わかんないもんっ!千秋はユリさんが好きなんでしょ……!?」

「んなこと言ってねぇだろ」


はっきり言ってよぉ……。

涙が目の淵に溜まって、目の前に居る千秋の顔が滲んで見える。

掴まれたままの腕から千秋の体温が流れこんで焼けるように熱い。



「雅弥から聞いたろ?兄貴、大学卒業したら婚約するんだ」


聞いたよ……。

春希さんに会ったんだから。



「それで夏休み色々あって」

「ほら、またそうやって……」


またはぐらかす。

あたしはちゃんと全部聞きたいんだよ。

千秋の気持ちを全部聞きたいのに、なんでいつも答えてくんないのよぉ……。



「意味わかんない……」

「だからオレは頼まれて……」

「頼まれたら抱きしめるんだ?」


あたしのその言葉に、腕を掴む千秋の手にグッと力が入った。

 

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