俺様王子と秘密の時間
◆王子様と甘いキス
忘れられるハズがなかったんだ。
千秋を一気にまくし立ててあんなことを言ったのはあたしなのに。
心は正直に反応する。
朝、女の子たちの黄色い悲鳴を聞く度にあたしは窓に目をやって。
廊下ですれ違う瞬間も、
甘い香水の匂いにも、
表の顔で愛想を振り撒く横顔にも
無意識のうちに目で追っていて、あたしの全てが揺さぶられた。
けれど、千秋は一度も目を合わすことさえしてくれなくて。
まるであたしのことが見えていないみたいだった。
どうしてだろう……。
自分から手放した恋なのに、どうしてこんなにも胸が張り裂けそうになるんだろう。
いつまでも臆病者のあたしは、あの頃と変われないままで。
“花子”さんのままだった。