俺様王子と秘密の時間


「じゃんっじゃん作るんだから、ボーッとしてないでよ?」

「うん」

「あ。まな板じゃなくて、フルーツ切ってよね?」

「へ……?」


はーちゃんに言われてまな板に視線を落とす。


うわぁあああああ。

あたしはクレープにトッピングする果物ではなくて、まな板を切っていた。

果物ナイフの跡がうっすらと残っている。



「シイはバカだなぁあー。仕事はちゃんとやらなきゃ。わかった?」


なんて首を傾けながらあたしに指をさすと「ククッ」とコウちゃんは笑った。


頬っぺたに生クリームをつけて。



羽鳥は今度は焦がさないようにかやけに慎重に生地を焼いていた。

羽鳥の鼻にも生クリームがついていた。



だけどあたしは。

美味しそうな果物や、トッピングされたクレープを見ても。

ゴリラ顔には似合わなすぎるくらい可愛いらしい三角巾をつける西山先生を見ても。


笑える気分にはなれなかった。

 

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