俺様王子と秘密の時間
「こんないい男を振るとはな」
羽鳥がコーラを空けると、プシュッと小気味いい音が響いた。
「羽鳥……あの……」
「逃がした魚はデカイんだぜ?」
あたしが謝ろうとしたのを察したのか、羽鳥は言葉を遮るとそう言って笑い飛ばした。
切れ長の瞳が優しく緩んで、それを見たあたしは胸がほころんだ。
……ほんとに逃がした魚はデカイかもしれない。
いつもじゃれあってふざけあって、羽鳥があたしの頭を撫でて。
いつもいつも羽鳥の隣は居心地が良かったよ。
お日様みたいに暖かかったの。
羽鳥の無邪気な笑顔に、どしゃ降りだった気持ちが晴れていく。
「羽鳥……ありがとう……」
“ごめんなさい”は言わない。
“ありがとう”を言いたかった。
「……早く食えよ」
苺100%の羽鳥スペシャルをパクっとかじった。
甘い甘い、
熟した苺の味がした。