俺様王子と秘密の時間
羽鳥はそう言うとコーラの缶をグシャッと潰してゴミ箱に投げた。
例え千秋がユリさんと結ばれたとしても、もうあたしには関係ないんだから。
本当に好きな人と結ばれるなんて、素敵なことなんだし……。
「いいもん……」
唇を噛みしめて、瞬きをしたら溢れてしまいそうな涙をこらえた。
「あの野郎……ふざけやがって」
羽鳥の大きくて暖かい手があたしの頭を撫でる。
意地をはって、唇を尖らせてヘソを曲げるあたしはなんて可愛くないんだろう。
クレープにのっかていた最後の苺をパクンと食べると、甘酸っぱい苺の味が口に広がっていく。
その一粒は熟されていなくて。
まるであたしの恋心みたいだ。
「そろそろ行くぞ」
あたしと羽鳥は教室へ戻ろうと、立ち上がったその時だった……。
「雅弥……」
渡り廊下の入り口で、羽鳥を呼ぶ声が響いた。